
ジェネリックを専門に販売する集団
今回は医療機関がジェネリック医薬品を仕入れする場合、主に二つのルートが存在します。一つはメディセオ、アルフレッサ、スズケン、東邦薬品といった全国網を持った医療用医薬品の専業卸問屋を大手広域卸。
そして、もう一つのルートは、地場に根付いた医薬品卸問屋で、会社規模は中小企業というよりも、組織的に数十名、数百名規模のところもあれば、1人~2人の小規模のでの会社もあります。そのためエリアも県内だけに絞った活動をしているところが大半ですが、組織化された会社は近隣に商圏を拡大しているようです。
このような医療用医薬品というカテゴリの中のジェネリック医薬品だけを取り扱う会社を「販社」と呼ばれています。今回は、この販社について掘り下げてみようと思います。
販売会社=「販社」の定義は、本来
メーカーが自社製品の流通を円滑化し、流通政策を徹底させる目的で出資・設立したメーカー資本系列の卸売流通企業。販売店援助だけでなく、配送、販売促進、アフター・サービスなど販売に関するいっさいのマーケティング活動を統括する。形態としては、地区別に販売会社を設立するケースと、商品別販売会社、あるいはメーカーの営業部的機能を果たす販売会社もある。(参照:Weblio 辞書)
といわれています。
では、ジェネリック医薬品の販社はどいったところがあるのか調べてみました。

ジェネリック専売でも100億円を販売する会社がある
全国ジェネリック医薬品販社は、どんなところがあるのか?
ジェネリック医薬品の普及とともに2010年に日本ジェネリック医薬品販社協会=( http://www.j-generic.sakura.ne.jp)が設立しました。まずはこの協会の会員企業を確認したところ協会会員企業は全国に86社。ほぼ各都道府県を網羅しています。たくさんの企業が参加しているとはいえ、この協会時代は設立されて10年ぐらいの団体です。
会社名 | 本社 | 資本金 | 売上高 | 従業員数 |
西部沢井薬品 | 福岡県 | 5,000万円 | 130億円 | 280 |
ジェネファ東北 | 福島県 | 4,120万円 | ||
中部日本医薬※② | 長野県 | 3,940万円 | 140 | |
日医工山形 | 山形県 | 3,500万円 | ||
寿薬品 | 北海道 | 2,600万円 | 35 | |
イズミ薬品 | 大阪府 | 2,400万円 | ||
三原薬品 | 愛媛県 | 2,000万円 | 26 | |
シンコー薬品 | 福岡県 | 1,600万円 | ||
京葉東和薬品 | 千葉県 | 1,000万円 | 30億円 | 100 |
湘南メディファー | 神奈川県 | 1,000万円 | ||
東和ケミカル | 富山県 | 1,000万円 | ||
キョーヤク※② | 新潟県 | 1,000万円 | 約10億円 | |
ジェネスト | 愛知県 | 1,000万円 | 45 |
※上記、各コーポレートサイトから抜粋。(2017.9時点)
※② 中部日本ホールディングスグループ
この協会会員企業から一部の企業を抜粋して一覧にしてみました(上記表)。コーポレートサイトを確認しましたがホームページを更新していないサイトも多く情報が最新のものか疑わしい状況ではあります。
調べていても比較材料が「資本金」程度しかなかったのが残念ですが、一部売上を公開している企業もありました。そのなかでも、おそらく全国一位?(あくまで推測)西部沢井薬品は130億円の売上を叩き出しています。
ジェネリック医薬品だけで100億円企業があるということにビックリすると同時にジェネリック使用促進の流れがここまでの数字を生み出していることに間違いはないでしょう。
メーカーお墨付き販社の存在はあるのか?資本提携は?
冒頭でもご説明しましたがメーカーお墨付きで社名にメーカーの名前を使っている販社もあります。西部沢井薬品、日医工山形、京葉東和薬品、東和ケミカルといった大手ジェネリックメーカー(沢井製薬、日医工、東和薬品)の名前を盛り込んだ社名になっています。それだけメーカーとのつながりも強固なものと推測されます。ただし資本関係は微妙です。
ひとつ事例として、2017年2月に日医工がプレスリリースしたものです。→こちら
日本医薬品中国販売株式会社が倒産した際に関連会社に日医工の名前が付いた子会社を複数持っていましたが、この倒産に関しては日医工は資本関係もない、関連会社でもないと、明確に発表しました。
この事例に限らず、メーカー社名を利用していても、資本関係の有無はかなり不透明だと推測されます。

混沌とするジェネリック業界、どうなる?
今後のジェネリックの販社はどうなる?
すでに売上が100億円企業もあるので今後さらに西部沢井薬品を追随する販社が増えてくる可能性も高いでしょう。ジェネリックのシェア80%時代に向けて邁進するだけといいたいところでしょうが、近年はジェネリックの普及に伴い、薬価の見直しやジェネリックメーカーの集約化など大きな話題になりつつあります。
特に、2017年9月の中医協薬価専門部会にて、日本ジェネリック製薬協会の吉田会長(東和薬品社長)が業界内では統合・再編の動き、集約化に言及したというニュースもありました。
おそらく、国内生粋のジェネリックメーカはここ数年で生き残りを賭けた勝負が続き、負けたところは淘汰され一気にメーカーは激減するのではないかと思われます。
こういった動きが水面下で活発化するのがわかっていたのか、販社界隈もこの1年だけで吸収合併が盛んにおこわなれたり、倒産も多くなってきています。
- 2017-9 兵庫県 医薬品卸のコスモメディカルが自己破産へ
- 2017-2 日本医薬品中国販売 負債総額は約45億円、関連会社を含めた4社の合計は約85億円。
- 2017-1 東邦HDが有限会社日豊メディックの株式取得
- 2016-9 東邦HDがテバ製薬のジェネリック販社7社を完全子会社化
- 2016-9 東邦HDが株式会社エムコム九州の株式取得
買収案件は東邦HD(東邦薬品)が目だった動きを行っています。この1年で9社もの販社を傘下しています。
また倒産も目立ち始めています。総額で約85億円というとかなり大きな負債を抱えて倒産する販社もあります。ネットニュースではこれ以上に探すことはできませんでしたが、販社の廃業はさらにたくさんあるのではないでしょうか。
今後、ジェネリックの普及により成長できる販社と倒産・廃業、もしくは吸収合併される販社もさらに数を増やして、全体の販社の数というのは減らしていくことが推測されます。