
ジェネリック業界はブルーオーシャン?

2017年6月に発売されたテルミサルタンやアリピプラゾールなど、AG発売の影響が大きく、各社シェアの伸び悩みが懸念されています。そのため価格優位なプロモーションが先行するメーカーが続出したことで、ドラッグバリューでもアンケートを実施していますが、、、対薬価10~20%台が通常卸価格になっている模様です。
熾烈なメーカーの生き残り合戦が今後も続く見通しに、製品を作る製薬メーカーはもちろん医薬品を運ぶ医薬品卸業など、ジェネリック業界全体の流れが悪い方向へと進んでいってるように思えます。
さて今回は第1四半期(4-6月)、直近の上場メーカーの売上実績が発表されました。特に上場しているジェネリックメーカー3社の資料を比較してみました。
2018年3月期1Q(4月-6月)の売上実績を比較してみた
1Q(百万) | 日医工 | 沢井製薬 | 東和薬品 |
売上高 | 48,513 | 33,646 | 22,513 |
通期計画 | 206,000 | 142,000 | 94,000 |
通期進捗率 | 23.55% | 23.69% | 23.95% |
売上原価 | 31,814 | 19,884 | 12,548 |
営業利益 | 3,180 | 5,376 | 2,376 |
売上高営業利益率 | 15.2 | 6.2 | 9.4 |
売上高では日医工が485億円と断トツ業界をリードしていますが、実際内情を確認してみると外資製薬メーカーを買収したことが今回の売上に大きく寄与しています。また売上高営業利益率の卸業指数は一般的には1.0ぐらいが平均的といわれるなか、「15.2」というのは企業としての実力、儲ける力、管理効率が大変優れているということになります。今後のビジネスの展開性が楽しみです。
続く沢井製薬:336億円(+2.1%)で日医工は大きな差が開いているように見えますが、実は日医工の国内市場での売上は37,859(百万円)です。1Qで沢井製薬と日医工の売上高の差は42億円です。それより沢井製薬の大きな問題は受託売上が大きく減少していることでしょう。今回は前年同比をギリギリプラス成長を死守できました、今後通期計画の変更ということも考えられるのではないかと心配です。
東和薬品:225億円(+11.6%)は前年同比は大きくプラスにできましたが、通期進捗率でみるとまだまだ油断はできない状況です。また売上原価が1、2位の上位と比べても随分高いように思えます。
販管費の人件費と研究開発費はどうなっているのか?
日医工 | 沢井製薬 | 東和薬品 | |
販管費 | 13,521 | 8,385 | 7,587 |
人件費 | 2,466 | 5,528 | 3,318 |
研究開発費 | 1,956 | 2,150 | 1,695 |
販管費(販売費及び一般管理費等)・・・企業の営業活動(いわゆる本業の活動)に要した費用のうち、売上原価に算入されない額をいう。販売管理費や営業費、販管費とも呼ばれる。(参照:https://ja.wikipedia.org/)
人件費は特に沢井製薬が高い傾向ですが、これはどちらかという日医工が少なすぎるようにも思えます。研究開発費については、東和薬品が大きく予算をつぎ込んでいる状況です。
ただジェネリックに予算をつぎ込むとしても次回2017年12月発売予定のクレストール(ロスバスタチン)、オルメテック(オルメサルタン)の超大型品以降に、ジェネリックの目玉商品というのは当分無いと言われています。
さて、東和薬品さんはどういった開発を行っているのでしょうか・・・ちょうどつい先日8月15日にプレスリリースで日本初 医療用医薬品の錠剤に2色の製品名印刷について発表されているのでこういったところに予算を組んでいるということでしょうか。

荒波を書き分ける各ジェネリックメーカー
医療機関別 納入実績
日医工 | 沢井製薬 | 東和薬品 | |
病院 | 17.5% | 13.1% | 12.3% |
DPC病院 | (11.2%) | (8.0%) | 不明 |
診療所 | 10.9% | 10.0% | 20.2% |
調剤薬局 | 64.8% | 75.2% | 67.5% |
他 | 7.3% | 1.7% | – |
こうして数字を見比べて見る分には各社大きな開きはありませんが、日医工は2000億円を目指す企業で、東和薬品は1000億円を目指す企業での数パーセントは大きい差が生じます。
イメージ的には日医工は病院市場に強く、沢井製薬は調剤薬局市場に強い、そして東和薬品は診療所に強い。ということで、そして戦略の差がここ数年で大きく開いたのでしょう。
販路別売上高推移
1Q(百万) | 日医工 | 沢井製薬 | 東和薬品 | 3社合計(割合) |
卸 | 32,565 | 20,669 | 2,071 | 55,305(59%) |
販社 | 2,316 | 11,208 | 5,943 | 19,467(21%) |
直販 | – | – | 13,575 | 13,575(14%) |
他 | 2,977 | 1,769 | 945 | 5,691(6%) |
1Q実績 | 37,859 | 33,646 | 22,513 | 94,018 |
販路は、日医工は卸ルートに強い、沢井製薬は販社ルートに強い、東和薬品は直販ルートに特価というのが今までの流れでした。
しかし、ご存知の通り今年の4月ぐらいから東和薬品が直販ルートから卸ルートへの切り替えを積極的に進めています。その戦略の効果が出てきたため売上増加に繋がっているのだと予想できます。
そして、如実にいえることは、東和薬品の新たな戦略からしても直販ルートや販社ルートは今後厳しいということは言わざる得ません。またTOP3社を売上ルートを合計してみると、卸ルートが6割のシェアを担っていることになります。
これが今後東和薬品の直販ルートの13,575が完全に卸ルートになった場合は、73%のシェアへとさらに拡大します。
まとめ
第一四半期を改めて確認してみると数年前ジェネリックメーカーの年間売上をたった3ヶ月で叩き出す企業へと成長していることに驚かされます。ただし業界は目まぐるしく変化しており、メーカー、卸、販社どの立ち位置にいても、どういう変化を求められるか臨機応変に対応していかないと、たちまち荒波にのみ込まれてしまうでしょう。
